『ハリー・ポッター』シリーズで最も複雑な人物、セブルス・スネイプ。彼は本当に「いいやつ」だったのでしょうか。
物語の序盤ではハリーをいじめる嫌な教師として描かれます。しかし、スネイプがいい人だといつわかるのか、その伏線は巧妙に隠されていました。
スネイプの死亡シーンで明かされる真実、ハリーを守るシーンに隠された切ない動機。なぜ彼の人気は高いのか。その「かっこいい」姿や「かわいそう」な生い立ちが、多くの人の心を掴んでいます。
この記事では、スネイプの行動の裏にある真実を深く掘り下げ、彼の本当の姿を解き明かしていきます。
- スネイプが「いいやつ」と言われる理由
- 彼が「わるいやつ」に見えた行動の背景
- スネイプの人気の秘密と人間的魅力
ハリーポッターのスネイプはいいやつ?はいつわかる

彼の行動は一見矛盾に満ちていますが、その全てが最終盤の「真実」へと繋がっています。ここでは、彼が「いいやつ」とされる最大の理由と、その伏線がいつ明らかになるのかを見ていきましょう。
スネイプがいい人だといつわかる?真相解明
スネイプの真実が明らかになるのは、物語の最終巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』の終盤です。
ヴォルデモートによって致命傷を負わされたスネイプは、死の間際にハリーに自分の「記憶」を託します。ハリーがその記憶をダンブルドアの校長室にあった「憂いの篩(ペンシーブ)」で見ることで、すべての謎が解き明かされます。
読者とハリーが真実を知るのは、まさにこの瞬間です。彼がハリーの母リリー・ポッターを生涯愛し続け、彼女を守れなかった罪悪感から、ダンブルドア側の二重スパイとして命がけでハリーを守ってきたことが判明します。
「Always(永遠に)」の誓い
スネイプの記憶の中で、ダンブルドアが「これほどの年月が経ってもか?(After all this time?)」と、まだリリーを愛しているのかと問いかけるシーンがあります。
それに対するスネイプの返答は、ただ一言。
「永遠に(Always)」
この一言に、彼のすべての行動の動機が集約されています。
スネイプがハリーを守るシーンに隠された愛
物語の最初から、スネイプはハリーを嫌っているように見えましたが、実際には陰で何度も彼の命を救っていました。これらもすべて、リリーへの愛とダンブルドアとの密約のためでした。
『賢者の石』クィディッチの試合
ハリーが最初のクィディッチの試合で箒から振り落とされそうになった時、ハーマイオニーたちはスネイプが呪いをかけていると誤解しました。しかし実際には、クィレル教授がかけていた呪いに対し、スネイプが対抗呪文を唱え続けてハリーを守っていたのです。
『アズカバンの囚人』叫びの屋敷
狼人間になったルーピンがハリーたちに襲いかかろうとした瞬間、スネイプは咄嗟にハリーたちの前に立ち、身を挺して彼らを守ろうとする防御姿勢を取りました。
※この描写は映画版のみの演出で、原作小説にはありません。
『不死鳥の騎士団』アンブリッジの尋問
アンブリッジがハリーに「真実薬(ベリタセラム)」を使おうとした際、スネイプは「使い果たした」と嘘をつき、ハリーへの尋問を妨害しました。また、ハリーが魔法省に向かったと知ると、すぐに不死鳥の騎士団に連絡し、助けを差し向けています。
守護霊に込めたリリーへの切ない想い
スネイプの愛の深さを最も象徴しているのが、彼の「守護霊(パトローナス)」です。
スネイプの守護霊は、リリーとまったく同じ「牝鹿(めじか)」でした。
守護霊(パトローナス)とは?
非常に高度な防衛呪文であり、術者の最も幸福な記憶から生み出されます。その形状は、その人の本質的な愛や希望を象徴すると言われています。
リリーが亡くなってから17年が経過してもなお、彼の守護霊がリリーと同じ形を保っていたことは、彼の愛が生涯変わらずリリーだけに向けられていたことの動かぬ証拠です。『死の秘宝』でハリーを「グリフィンドールの剣」へと導いたのも、この牝鹿の守護霊でした。
スネイプはいいやつではない?闇の側面と過去の行動

彼を「いいやつ」と断言できない理由も明確に存在します。それは彼が教師という立場でありながら、生徒たちに向けた許されざる「加害」の側面です。彼の暗い過去がどのように行動に影響したのかを解説します。
ハリーへの執拗ないじめと過去の恨み
スネイプがハリーに厳しく当たった最大の理由は、ハリーの外見が、学生時代にスネイプを執拗にいじめた宿敵ジェームズ・ポッター(ハリーの父)に生き写しだったためです。
スネイプは、ジェームズへの生涯消えない憎しみと嫉妬を、その息子であるハリーに「投影」してしまいました。ハリーは彼にとって、「憎むべき宿敵の顔」と「愛する女性の目」を持つ、愛憎の対象そのものだったのです。
特にスネイプを苛立たせたのは、「リリーの目を持つハリー」が、父親そっくり(とスネイプには見えた)の傲慢さでルールを破ることでした。「自分はリリーのために命を懸けて二重スパイをしているのに、その息子は呑気に規則を破ってばかりいる」という歪んだ正義感と苛立ちが、ハリーへの八つ当たりとして表れていました。
ネビルやハーマイオニーへの「加害」
スネイプの攻撃はハリーに留まりません。特にネビル・ロングボトムへの執拗ないじめは異常なレベルでした。ネビルの「ボガート(まね妖怪)」がスネイプの姿を取るほど、彼はネビルにとって最大の恐怖の対象でした。
また、『炎のゴブレット』でハーマイオニーが呪いで前歯が伸びてしまった際、スネイプは「違いは見当たらない」と侮辱し、彼女を泣かせています。
ネビルをいじめた「もう一つの理由」とは
ファンの間では有名な考察として、ネビルいじめの深層心理には「予言」が関係しているという説があります。
ヴォルデモートを倒す「予言の子」は、ハリーともう一人、ネビルも候補でした。スネイプの無意識下には、「もしヴォルデモートがネビルを選んでいたら、リリーは死なずに済んだかもしれない」という、ネビルへの理不尽な責任転嫁があったのではないかと言われています。
権力の濫用とトラウマの連鎖
これらの行動は、スネイプが自身が受けたいじめの被害体験を克服できず、「教師」という権力を利用して、より弱い「生徒」をいじめるという典型的な「トラウマの連鎖」を体現しています。この側面が、彼を単純なヒーローと呼べない最大の理由です。
リリーを「穢れた血」と呼んだ取り返しのつかない過去
スネイプの人生を決定づけた悲劇的な転換点が、学生時代にリリーとの友情が決定的に終わった「穢れた血(Mudblood)」事件です。
ジェームズたちから屈辱的ないじめ(逆さ吊りにされる)を受け、それをリリーがかばおうとした際、プライドをズタズタにされたスネイプは、怒りと情けなさから衝動的に彼女のことを「穢れた血(Mudblood)」と呼んでしまいます。
これは、マグル生まれの魔女・魔法使いに対する最悪の差別用語です。この一言が二人の友情を完全に終わらせました。リリーを失った孤独感から、スネイプは本格的に闇の魔術と死喰い人(デスイーター)へと傾倒していくことになります。
衝撃の真実:スネイプの死と隠された伏線

物語の終盤、スネイプの行動の多くはダンブルドアとの「密約」に基づいていたことが明らかになります。彼の死と、それまでに張り巡らされた巧妙な伏線について解説します。
スネイプの死亡シーンと衝撃的な理由
ホグワーツの最終決戦で、スネイプはヴォルデモートの蛇「ナギニ」によって殺害されます。
その理由は、ヴォルデモートが「ニワトコの杖」の真の所有権を誤解していたためです。ヴォルデモートは、ダンブルドアを殺したスネイプが杖の所有者だと信じ、その忠誠心を得るためにスネイプを殺害しました。
しかし、実際には杖の所有権は(ドラコを経て)ハリーに移っていました。スネイプの死は、ヴォルデモートの戦略上、まったくの無意味だったのです。
最期の言葉:「私を見てくれ」
スネイプは死の間際、駆けつけたハリーに記憶を託し、「私を見てくれ(Look at me…)」という最期の言葉を遺します。彼はハリーの「目」を見つめていました。映画版では「リリーと同じ目だ」というセリフが追加され、彼が最期の瞬間に、憎いジェームズの面影(ハリーの顔)ではなく、生涯愛したリリーの面影(ハリーの目)を見て死にたかったという、彼の生涯を貫く動機がより明確に描かれました。
マクゴナガルがわざと負けた?決闘の真意
「マクゴナガルがわざと負けた」という噂がありますが、これは映画版『死の秘宝 PART2』での決闘シーンの解釈です。
実際には、「わざと負けた」わけではありません。このシーンでスネイプは、マクゴナガルの呪文を一切攻撃に使わず、すべて防御と「跳ね返し」に利用しました。
映画版の巧妙な演出
スネイプはマクゴナガルの強力な呪文を受け流し、その流れ弾を背後にいた死喰い人のカロー兄妹に正確に当てて気絶させました。そして、そのまま窓を破って逃亡します。
これは、スネイプがホグワーツの教師や生徒を傷つける意志がなかったこと、そしてカロー兄妹の支配から生徒を守るという(ダンブルドアとの約束)最後の任務を果たしたことを示す、非常に巧妙な演出でした。
なぜスネイプの人気は高いのか?その魅力と孤独

複雑な背景を持つスネイプは、なぜこれほどまでにファンの人気を集めるのでしょうか。彼の「かわいそう」な境遇と、孤独なヒーローとしての「かっこよさ」に焦点を当てます。
なぜスネイプは「かわいそう」と言われるのか
スネイプの人生は、まさに悲劇の連続でした。
孤独な生い立ちと学生時代のいじめが彼の原点です。うらぶれた町スピナーズ・エンドで不仲な両親のもとに育ち、ホグワーツではジェームズ・ポッターたちから執拗ないじめの標的にされました。
その中で、唯一の光であったリリーさえも、自身の過ち(「穢れた血」発言)で失ってしまいます。さらに、死喰い人として盗み聞きした「予言」が原因で、リリーが死ぬという最悪の結果を招きました。
その後は、リリーへの愛と贖罪のために二重スパイとなりますが、その真意は誰にも理解されず、不死鳥の騎士団からも死喰い人からも疑われ、生涯孤独な戦いを強いられました。この報われない人生が「かわいそう」と同情と共感を呼んでいます。
影のヒーローが「かっこいい」と評される理由
スネイプのかっこよさは、その「覚悟」と「精神力」にあります。
彼はリリーへの愛「だけ」を動機に、ヴォルデモートという最強の開心術士(人の心を読める)を欺き抜き、最も危険な二重スパイとしての任務を最後まで演じきりました。ダンブルドアの計画に従い、全魔法界から「ダンブルドアを殺した裏切り者」としての汚名を着ることも受け入れました。
すべてを失ってもなお、たった一つの愛のために、嫌われ役を演じながら影でハリーを守り抜いた自己犠牲の姿は、まさに「影のヒーロー」であり、多くのファンが「かっこいい」と魅了される最大の理由です。
「最も勇敢な男」
物語の19年後、ハリーは自分の次男に「アルバス・セブルス・ポッター」と名付けました。スリザリン寮を恐れる息子に対し、ハリーは「スリザリン出身のある人物(スネイプ)が、私が知る中で最も勇敢な男だった」と語りかけます。
これは、自分をあれほどいじめたスネイプへの「赦し」と「感謝」の表れであり、憎しみの連鎖をハリー自身が終わらせた象徴的なシーンです。
まとめ:ハリーポッターのスネイプはいいやつか
結論として、「ハリーポッターのスネイプはいいやつか」という問いへの答えは、「単純ないいやつではないが、最も勇敢な男」というのが最適でしょう。
作者のJ.K.ローリング氏が言う通り、スネイプは「グレー」な人物です。彼は、リリーへの愛ゆえに究極の自己犠牲を払った「ヒーロー」の側面と、同時に、過去のトラウマから生徒をいじめた「加害者」の側面を併せ持っています。
この善と悪が同居する矛盾こそがセブルス・スネイプの最大の魅力であり、彼を『ハリー・ポッター』シリーズで最も複雑で、人間味あふれるキャラクターにしているのです。
